2022年2月24日木曜日

2拠点生活メモ

今年から本格的に2拠点生活が始まった。

2021年8月に母が体調を崩して入院。数日で退院できると思っていたが、予想以上に長引いた。本人は「胸が苦しい」と言うのだが、どれだけ検査をしてもどこも悪いところはない。長年診てきた医師が「もしや?」と思い抗うつ剤を投与したところ、みるみる回復した。9月に退院できたものの、入院生活が長引いたため、ちょっと足元がおぼつかなくなっていた。ひと月ほどで状態も落ち着き、私は自宅に戻った。

それから約1か月後、母がまた体調を崩して入院したのである。弟の話を聞くと、私が帰った後も調子がよかったという。診察の時に「とても元気になったので抗うつ剤はいらない」と言ったようだ。これがマズかった。12月の初めに一旦退院して自宅に戻ったものの、数時間後には「胸が苦しい」と言い出し、そのまま病院へとんぼ返り。結局、退院できたのは1月の上旬だった。

昨年9月の時点で、実家で仕事をするためのデスクと椅子を買った。買い替えで余っていた古いモニタを実家に運んでマルチモニタ体制も整えていた。パソコン(コンパクトデスクトップ)、キーボード、ローラーバーマウス、何冊かの本(紙の辞書、頻繁に参照する本など)を段ボールに放り込み車に積み込むだけ。服も何着か実家に置きっぱなしにした。

今年になってからは、荷物の積み込みを減らすためにノートパソコンを新調した。キーボードも買い足したので、ノートパソコンとローラーバーマウスだけを持って行けば仕事ができる。自宅の仕事環境をそっくり再現することは不可能だが、かなり近い環境ができた。紙の辞書や資料については、実家近くの図書館で利用者登録をした。これが思った以上に大変だったので、今後2拠点生活で仕事をする可能性がある方は今のうちに調べておくとよいと思う。

実家の近くには市立図書館と県立図書館がある。1月の時点で県立図書館は改修工事のため閉館中だった。市立図書館は原則、「市内在住者、通勤・通学している者」にしか貸し出しできないという。コロナ禍であるため、館内の滞在時間も短くしろとあちこちに貼り紙してあった。図書館に問い合わせると、長期帰省中の学生などについては、申請をして審査を通れば例外的に貸し出しが認められるらしい。申請書を出したうえ、市内に実家があることを証明しなければならないという。「3か月以内に届いた世帯主宛の消印付き郵便物」を提示するよう求められた。審査には約1週間ほどかかるとも言われた。

みなさん、ご自宅に届いた郵便物があればちょっと見ていただきたい。いまどき、消印が付いた郵便物ってないよ? 役所から送られてくる郵便物もダイレクトメールも料金別納だ。私の実家には一通もなかった。役所から母宛てに届いた郵便物を提示したらあっさり認められたけど(「役所から」というのがキモだったようだ)。

申請書には実家に滞在する理由を詳しく書かなければならない。「高齢の母の介護のため」と書いていたら、いつまで介護が必要なのかもっと詳しく書けという。このあたりでちょっとイラッとしてきた私は、「え?死ぬまでって書いておけばいい?」と突っかかってしまったし、実際にそう書いた。笑えない。高齢化社会とリモートワークの普及で、今後2拠点生活をする人が増えるだろう。市民じゃないけど図書館を利用したい人も増えるだろう。もっと、柔軟に対応できないものだろうか?

ちなみに県立図書館は「日本国内に居住していれば誰でも貸出可能」だそうだ。後日こちらでも利用者カードを作る予定。

そして申請書を提出した翌日、図書館から「利用者カードができたので取りに来てください」と電話があった。脱力した。あんなに渋る必要あった?

こうして、環境を整えたことで2拠点生活のストレスは大幅に減った(猫がいないことを除き)。私の場合は、車で1時間ほどの距離なので移動の負担はさほどでもない。必要とあらば、今すぐにでも行ける状態だ。強いて言えば、自分の通院日を外すくらいだろうか。あらかじめ、どの週に実家にいるかを母にも伝えておくと、仮に何らかの手続きが必要になったとしても日程を組みやすい。

今後しばらくは月の半分くらいを実家で暮らすことになる。幸いなことに、母は身の回りのことはすべて自分でできる。なぜ私が2拠点生活をするかというと、母や弟の不安を軽減するためだ。弟は仕事に行っている間、高齢の母がひとりで家にいることに不安を感じている。母は人に迷惑をかけたくないがために、身内であっても助けを求めることができない。このふたりのメンタリティは家族主義が抱える根深い問題だと思うが、それはさておき、私が実家にいる時間が増えればふたりの不安はぐっと減る。私の不便はぐっと増えるが…。

父が死んだときに悲しくはなかったが、もう少し顔を合わせていればよかったのかなあ?と思った。とびきり薄情な私は、明日母が死んでも悲しくないだろう。「まあ、ちょいちょい一緒に過ごしたからよかったやろ?」と言うためだけに2拠点生活をはじめたと言っても過言ではない。