2023年8月2日水曜日

習い事で乗り切る2拠点生活

 3年前から始まった2拠点生活。当初は福岡の自宅にいる期間の方が長かったのだが、母がどんどんヨボヨボになり、弟ががんになり、じわじわと実家にいる時間が増えてきた。そして今年に入ってからは、実家にいる期間の方が長くなっている。

母に対して複雑な思いを抱いている私にとって、これは想像を絶するストレスである。そこで、実家暮らし期間を少しでも楽しく過ごせるよう2月から習い事を始めた。ギターだ。

高校生の頃にバンドでギターを弾いていたとはいえ、腕前はギター歴2か月程度。一通りのことはなんとなく知ってはいるが、どれもできない。メジャーコードくらいはわかるが、セブンスコードはわからない。運動神経に大きな難を抱えているので、右手と左手が別の動きをマスターするまでに人の3倍くらい時間がかかる。一度に1つのことしかできない。老眼で手元が見えない。すべてにおいて、とにかくたどたどしいのだ。

まず、ロックンロールのクラシック『Johnny B. Goode』を教えてもらった。50分のレッスン時間でできたのはイントロ(約20秒)だけだ。それも、家に帰り着いた頃には一部忘れている。その後のレッスンでは苦手克服のために苦手なことを重点的にやることになった。選曲はすべて師匠に任せることにした。自分で選ぶと自分が弾けそうな曲しか選ばない。これでは弱点は永遠に弱点のままだ。

苦手なパートをワーッとでたらめに弾いてごまかすタイプの私に課せられた課題は、「スローテンポの泣きのギターをマスターすること」となった。スローテンポはごまかしがきかない。毎回「そこ、半音上がりすぎ」とか「タイミング半拍遅い」とか指摘されている。現在はゲイリー・ムーアの『Sunset』を練習中だ。半年のレッスンの甲斐あって、今までずーっと苦手だったチョーキングとビブラートをマスターした。横で聞いていた夫が「あ、チョーキングがちゃんと1音上がってる!」と驚いたほどだ。

実家で闇落ちしそうなときはギターを弾く。アンプにつないでガンガンに音を出す。指が疲れて動かなくなるまで弾けば気分も落ち着く。しかし、それでもダメなときがある。

6月末、ひと月入院していた母が退院することになった。ちなみに、どこも悪いところはない。不安発作を起こして手に負えなくなったのでかかりつけの病院にひと月お世話になったのだが、そのひと月でさらに足腰が弱ってしまった。実家暮らしが長引くことが確定し、いつにも増して闇落ちの気配が濃厚になる。ギターだけではこの状況を打破できないと踏んだ私はもう一つ習い事を追加した。テニスだ。

テニスは福岡で10年以上習っているのだが、こちらも腕前はテニス歴2か月程度だ。2拠点生活が始まってからというもの、テニススクールをお休みすることが増えた。しかも屋外コートのスクールなので、雨が降るとレッスンはお休みになる。この1年くらいは月に1回くらいしか行けていない。

幸い、実家の近くでチケット制だけでなく、ビジター料金の都度払いも可能なスクールが見つかった。チケット制はチケットの有効期間内に使い切れない可能性が高いので、割高ではあるがビジター料金都度払いにしてもらった。インドアコートなので雨でもテニスができる。

母のことでイライラが募るとテニススクールに行く。今年は猛暑だ。インドアコートといっても冷房があるわけではなく、直射日光が当たらないだけでコート上はおそろしく蒸し暑い。その中で80分間、全力で動き回る。レッスンが終わるころには、積み重なったイライラも雲散霧消している。ちょっとだけ晴れやかな気分で家族と向き合えるようになる。

今後も2拠点生活は続く。おそらく実家で過ごす時間が増える一方になるだろう。私のストレスはさらに増大し、また習い事を増やすことになるかもしれない。

ところで、ギターの方はギター歴半年くらいまで上達したと思っている。清水の舞台から飛び降りてギブソンのレスポールを買った甲斐があるというものだ。

練習開始後1か月の『Panama』
(この曲ではフェンダーのストラトキャスターを使っている)