2月4日、東京ではまこちゃんのロック葬が執り行われ、4000人を超える人が弔問に訪れたそうだ。関係者のコメントも続々と伝えられたが、その中で特に印象深かったのが、サンハウスのドラマー、鬼平のコメントだった。
「もう一度、まこちゃんのギターでドラムを叩きたかった。もう一度だけでいいから」
葬儀後、シナロケ公式アカウントが1本の動画を公開した。
2022年10月2日、別府のライブハウスCopper Ravensで行われたライブのワンシーン。撮影したのはまこちゃんの孫、ゆいちゃんだ。
別府では「地獄へドライブ」と題したライブが2017年から毎年開催されていた。サンハウスの曲『地獄へドライブ』にちなんで名付けられた別府限定のライブ名だ。そして、別府のライブはどういうわけか、たいそう盛り上がる。数年前に福岡のライブハウスで握手してもらったとき、「明日の別府のライブ行きます!去年すごく楽しかったです!」と言ったら、ベースの奈良さんが「あそこ、毎年ものすごく盛り上がるんですよね~」って嬉しそうに笑っていた。
その、熱さで有名なCopper Ravensのライブ。しかし、2022年のライブは明らかにいつもと違っていた。
8月に久留米で行われたライブでまこちゃんが痩せていることに気付いたのだが、10月になるとさらに痩せ細った姿でまこちゃんは登場した。そして、それに反比例するかのように鬼気迫る演奏。私の中に「このライブが最後のライブになるかもしれない」という予感のようなものが芽生えた。そして、それは他のファンも同じだったのかもしれない。
亡くなった後の報道によれば、5月に余命5か月と診断されたという。つまり、10月はまこちゃんの命の灯が消えてもおかしくない時期だったのだ。思い返せば、サンハウスとしてのライブをスタートしたのも5月。もしかすると、余命が短いことを知ってのことだったのかもしれない。
5月に東京と福岡で行われたライブの音源がCD化されて販売されている。CDを聴いての感想だが、この時期の演奏はどちらかというとまとまりに欠けたリハーサル的な演奏で、リズム隊とギターがかみ合ってない印象を受けた(福岡の音源は録音マイクが良くなかったのかもしれない)。それが8月の久留米ではバンドとしてまとまり、ぎこちなさが消え、10月のライブで完成されたかのようだった。それが別府での圧倒的な演奏だ。
メンバー紹介で号泣するルーシーの姿を見ていると、あの日が鮮やかによみがえってくる。私もあのとき、あの場所で、いつもとは違う何かを受け取ったのだ。覚悟のようなものを。Let's Keep on Rockin'.
もう一度だけでいいからあのギターが聴きたい。