2016年12月4日日曜日

父、がんになる その4

数々の検査の結果、肺がんの疑いが非常に濃厚ということで入院、手術となった父。12月2日に佐賀県立医療センター好生館に入院した。この日から私は仕事を休んで実家に戻っている。

仕事を休むかどうかはちょっと悩みどころだった。7年前に祖母の介護手伝いで実家に戻っていた数週間は仕事を休んでいない。取引先が1件だけで、1日3〜4時間やれば納期には間に合ったからだ。PDFの原稿をデスクに置いてWordにベタ打ちするだけだったのでノートパソコンでもできたのだが画面が手狭だったので、当時使っていたiMac G5を車に積み込んで実家でセットアップして仕事をした。ちょうど新しいiMacに買い換えたタイミングだったので、G5はそのまま実家の弟にあげた。今はWindowsでTradosを使い、オンラインCATツールを使う案件ではMacを使っている。辞書環境は極力統一させているし、ファイル(スタイルガイドなど)はクラウドに保存しているのだが、MacBookはブートしていないのでWindows環境をモバイルできない。クライアント数が増えていることと、至急案件が飛び込んでくることが多い時期でもあり、タイミングによっては対応できないので思い切って佐賀にいる間は仕事を休むことにした。今後仮にMacBookにWindows入れたとしても、普段はデュアルモニタで作業しているのに、ノートパソコンの画面だけでは老眼には厳しすぎるので、実家にモニタを1台置くことを検討中。

閑話休題。

入院した父は相も変わらず元気いっぱいで、受付で名前を呼ばれると走り出さんばかりの勢いで動き回る。荷物(キャリーバッグとショルダーバッグ)を一人で持って速足でどんどん歩いていく。誰がどう見てもついてきた母のほうが入院患者っぽい。

入院手続き後は麻酔やら輸血やらの同意書の説明と署名。入院中のスケジュール説明などあらゆる説明を受ける。午後4時前に執刀医からの説明。「カンファランス室」(カンファレンスじゃないのね)で大型モニタにレントゲン画像やCT画像を出しての説明、ホワイトボードを使って検査結果や術式の説明などが行われた。

実は入院前日、執刀医から父に電話がかかってきていた。父>母>私と伝言ゲームで聞いた劣化情報では「組織検査の結果でナントカっていう、昔で言うところの結核の菌が出てきて、感染する結核じゃないけど明日説明しますってよ」と謎の情報だけを伝えられて困っていたのだが、この件もクリアに説明を受けた。

3週間前に行った気管支鏡検査で採取した組織を培養した結果、抗酸菌が検出されたらしい。3週間前には検出されていなかったので、その時点では肺の腫瘍は悪性腫瘍の疑いが濃厚だったが、抗酸菌が検出されたとなると「非結核性抗酸菌症」の疑いが濃厚になってきたという話だ。ところが抗酸菌は薬物に対して耐性が強いらしく、7割ほどは薬物治療の効果が出ないらしい。悪性腫瘍である疑いも依然として否定できないため、手術でまず部分切除を行い、その場で簡易検査を行いがん細胞の有無を確認。がんでなければ部分切除のみで終了、がんであれば左肺上葉部を摘出することになった。執刀医の予測ではがんでない確率のほうがやや優勢らしいが、こればかりは実際に組織を見てみないと判断はできないらしい。

この説明の場には、手術に立ち会う研修医や看護師も同席していて、ちょっとした授業形式だったので面白かったのだが、暖房でぼーっとしていたためメモを取ることをすっかり忘れていた。父は途中から「聞いているフリ」だけで、最後に「頑張ります!」と宣言して終わった。

抗酸菌というのは土中に多く存在する菌らしい。10年ほどかけて結節を形成するらしい。父が庭仕事を趣味としていることと何か関連があるのだろうか?ただ、腫瘍マーカーでがんを示唆する数値が、しかもかなり高い数値で出ていたことはどういうことなのだろうか?まだ不明な部分が残っているのだが。もし抗酸菌症であれば、肺機能の低下も少なくて済み、術後の回復も早いので安心なのだが。

母が手術した時と違い、硬膜外麻酔を使って術後の痛みを軽減させるらしい。痛みの緩和方法は病院によって異なっているのだろうか?

ところで、説明の前に執刀医からも(私が送ったクレームに対して)深々と陳謝された。母は「なんでこの病院はいちいち謝るんだろう。確かに手際が悪かったけど、なんで?」とずっと疑問だったらしい。夕食の席で弟が「姉ちゃん、クレームメールに何て書いた?そうとう厳しいこと書いたやろ?こう毎回謝られるとカルテに『要注意』って書かれとるとしか思えん」と言い始めた。ここで初めて母にクレームメールを送ったことを話したら驚きつつ、「でもまああの対応は変だったしねー。それにしてもあんた、何て書いた?」と問い詰められている。

母の入院の時も今回の父の入院もそうだけど、執刀医が呼吸器外科部長という肩書きなのだけど、どう見ても私と同年代なのだ。ぼんやりと「そうかー、企業で働いていたら部長世代なんだなあ」とどうでもいいことを考えた。